子どもの偏食はなぜ起こる?「食べない」背景を口の動き・感覚・こだわりから考える

なかがわ

こんにちは!
茨木市で児童発達支援事業や保育所等訪問支援事業を行っている「えんりっち」の中川です。

「白いごはんなら食べるのに、チャーハンは嫌がる」
「野菜やお肉を、なかなか噛んでくれない」
「初めて見る食べ物は、口に入れる前から拒否する」
「特定の食感やにおいだけ、すごく苦手そう」

子どもの偏食について相談を受けていると、同じ「食べない」でも、その様子は本当にさまざまです。

つい「好き嫌いが多いのかな」「もう少し頑張って食べてもらった方がいいのかな」と考えたくなりますが、偏食の背景を見ていくと、本人にとっての“食べにくさ”が隠れていることがあります。

なかがわ

僕が偏食について考えるときは、大きく3つの視点から見ています。

  • 口の動き(口腔運動)
  • 感覚
  • 認知

今回は、この3つの視点から、子どもの「食べない」の背景を一緒に考えてみたいと思います。

目次

偏食を見るとき、最初に考えたい3つの背景

偏食への対応では、「この子は何を食べないか」に加えて、「どんなときに、どんなものを、どう嫌がるのか」を見ていくところから始めます。

たとえば、

  • 硬いものや繊維質なものを嫌がる
  • 噛まずに丸呑みしていることが多い
  • 特定の食感やにおいで強く嫌がる
  • 白ご飯は食べるけれど、混ぜご飯は食べない
  • 初めて見るものは口にしない

一見すると、どれも「偏食」に見えます。

でも、硬いものを嫌がるのは噛むことや舌の動きが難しいからかもしれませんし、混ぜご飯を嫌がるのは何が入っているかわからない不安からかもしれません。

同じ「食べない」でも、背景にあるものは子どもによって違うんです。

① 硬いものを嫌がる・丸呑みする偏食と、口の動き

食べるとき、口の中ではいくつもの動きが連携しています。

  1. 唇で食べ物を口の中に取り込む
  2. 唇を閉じながら顎を動かして噛む
  3. 舌で食べ物を動かして、歯列の上に乗せ続ける
  4. 最後に喉へ送り、飲み込む

こうした顎・唇・舌・喉の動きがうまく協調しにくいと、食材によっては「食べること自体が難しい」という状態が起こります。

たとえば、牛肉や葉物野菜は繊維が多いので、しっかり噛むには②と③を何度も繰り返す必要があります。舌の使い方や、舌と顎の連携が苦手だと、硬いものを嫌がる、繊維質な食材を避ける、しっかり噛まずに丸呑みする、といった様子に繋がる可能性があります。

この場合、「嫌いだから食べない」と見るだけでは、子どもが感じている難しさを見落としてしまいます。

まずは、どんな硬さや形なら食べられるのか、噛み方はどうか、飲み込むまでにどんな様子があるかを見ていきます。

② 食感やにおいを嫌がる偏食と、感覚の受け取り方

偏食には、感覚の受け取り方が関わることもあります。

口の中は触覚が大きく関わる場所です。
食べ物の硬さ、ざらざら・ぬるぬるとした感触、温度など、口に入った瞬間からたくさんの情報を受け取っています。

さらに偏食を考えるときには、味覚と嗅覚も重要です。

同じ料理でも食感が違うと嫌がったり、においを嗅いだだけで口にしなかったり、特定の味だけを強く嫌がったりするときには、その子にとって刺激がどのように感じられているかを考えてみます。

食感は、子どもが食べ物を受け入れるかどうかに大きく関わることが研究でも指摘されています。食感の好みには、口の動きの発達や、新しい食べ物への反応、触覚の感じ方など複数の要素が関係します。

口や舌は、からだの中でも感覚を細かく受け取りやすい場所です

ここで、少し脳の話をします。

脳の中で、からだの各部位の感覚を受け取る領域の大きさには違いがあります。

「ペンフィールドのホムンクルス」という有名な概念図では、手や口、舌などがとても大きく描かれています。

これは、手や口、舌などが、感覚を細かく受け取るために比較的大きな領域で表現されていることをイメージしやすくしたものです。

※Penfield & Boldrey(1937)を参考に独自作成

口の中はそれだけ細かな違いを感じ取れる場所なので、感じ方の個人差も表に出やすくなります。

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「他の人なら気にならない食感なのに、この子はすごく嫌がる」ということがあっても不思議ではありません。

感覚過敏や感覚鈍麻そのものについては、こちらの記事でも詳しくご紹介しています。

③ 混ぜご飯や初めての食べ物を嫌がる偏食と、こだわり

もう一つの視点が、認知の面です。

新しいものや変化への対応が苦手だったり、いつもと同じものへのこだわりが強かったりするお子さんの場合、味や食感そのものより、「何が入っているかわからない」「いつもと違う」ということが食べにくさにつながる場合があります。

たとえば、白ご飯は食べるのにチャーハンや混ぜご飯は嫌がる、いつものパンは食べるのに初めて見るパンは口にしない、といった反応です。

混ざっている料理は、一口ごとに何が入ってくるかわかりにくくなります。新しい食べ物も、味や食感をまだ予測できません。

大人はそれまでにいろいろなものを見たり食べたりしてきているので、たいていの食べ物は「だいたいこんな味だろう」と見当がつきます。

なかがわ

僕ももうすぐ40歳になり、まったく正体のわからないものに出会うことはずいぶん減りました(刺激を求める性質からするととても悲しいのですが…)。

でも子どもはこれからいろいろなものに出会っていく途中にいます。大人が当たり前だと思っている食べ物も、子どもにとっては初めてのことが多く、そのたびに小さなチャレンジをしているんです。

大人でも旅先で何でできているかわからない見たこともない料理が出てきたら、少し身構えてしまうと思います。新しいものはそれだけで不安を感じやすいものです。

多くの子どもは、まわりの人との関わりが育つにつれて「大好きなお母さんやクラスメートがあんなにおいしそうに食べているから僕も一口食べたいな」と新しいものを少しずつ取り入れていきます。

ただ、感覚の過敏さがあったり、新しいものや変化への不安が強かったりすると、このチャレンジには関わり方の工夫が必要になってきます。

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その子にとって「いつものもの」「わかっているもの」が安心につながっていると考えると、食卓での様子が少し違って見えてきます。

感覚の受け取り方と「予測できること」の関係については、触覚過敏の記事でも詳しくお話ししています。

食べ方の様子から偏食の背景を見分けるヒント

ここまでの3つを、食べ方の様子ごとにまとめると次のようになります。

  • 硬いもの・繊維質を嫌がる、丸呑みが多い
    → 口の動きや噛み方を見てみる
  • 特定の食感・味・においを強く嫌がる
    → 感覚の受け取り方を見てみる
  • 白ご飯だけ、混ぜご飯は嫌、初めてのものは食べない
    → 新しいものや変化への反応を見てみる

もちろん、実際には一つだけが原因とは限りません。

口の動きと感覚の両方が関係することもありますし、感覚の苦手さに「初めてのものへの不安」が重なることもあります。

だからこそ、偏食について相談を受けるとき、僕はまず好き嫌いや食べ方のエピソードを聞いていきます。

「何なら食べられる?」
「どんな食感が苦手?」
「混ざっているものはどう?」
「噛み方や飲み込み方は?」
「初めてのものへの反応は?」

こうして背景を整理していくことが、支援の最初のプロセスです。

えんりっちでは、保護者の方と一緒に食べ方を考えています

えんりっちで食事を扱う機会は、月1回のクッキングなどが中心です。毎日の食事場面で継続的に働きかける形とは違うため、偏食については保護者支援を中心にしています。

まず、普段どんなものを食べていて、何を嫌がるのかを伺うほか、偏食チェックリストにも記入していただいています。

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偏食について考えるときには、次の2冊も参考にしています。

発達障害児の偏食改善マニュアル
山根希代子 監修/藤井葉子 編著(中央法規出版、2019年)
偏食の原因を、発達や栄養の状態、口の機能などから考え、食べやすい食事の作り方まで具体的にまとめた本です。食事記録票など、現場で使える様式も載っています。
出版社のページを見る

発達が気になる子の偏食の見方と対応―口腔・感覚・認知・環境からのアプローチ
立山清美 編著/宮嶋愛弓・丹葉寛之・中岡和代・原田 瞬 著(三輪書店、2023年)
好き嫌いの理由を、口の動き・感覚・認知・環境・手の使い方に分けて考え、理由ごとの対応を紹介している本です。この記事の3つの視点とも重なる内容で、好き嫌いを整理するチェック表も付いています。
出版社のページを見る

そこから背景を一緒に考え、ご家庭でできそうな工夫をお伝えします。

実際に試していただいた様子を聞きながら、少しずつ食べられる範囲を広げていきます。

なかがわ

僕たちがまず考えるのは、「この子にとって、何が食べにくいんだろう?」ということです。

行動の背景を見て、その子に合う環境や関わり方を考えることは、えんりっちが食事以外の支援でも大切にしている視点です。

成長や栄養状態が気になるときは

偏食の程度が大きく、「ちゃんと育っているかな」と心配になることもあると思います。

身長や体重については、成長曲線から経過を見る方法があります。園や学校でも定期的に測定されています。

栄養状態の評価や医療的な判断は、えんりっちが直接行う支援の範囲とは分けて考えています。

食べることに関する困難を多面的に捉える考え方として、海外では「Pediatric Feeding Disorder(小児摂食嚥下障害)」について、栄養面だけでなく、摂食スキルや心理社会面など複数の領域から評価する枠組みも提案されています。

※一般的な「偏食」とPediatric Feeding Disorderは意味が異なります。ここでは、食べる困難を一つの原因だけで捉えない考え方の参考としてご紹介しています。

成長や健康状態について心配がある場合には、園・学校やかかりつけの医療機関など、必要な専門職につながりながら確認していくことが大切です。

「食べない」の理由が見えてくると、関わり方も変わります

偏食という言葉だけを見ると、「どうしたら食べられるようになる?」に目が向きやすいと思います。

でも子どもの食べ方を丁寧に見ていくと、その子なりの理由が見えてくることがあります。噛むのが難しい、食感がつらい、においを強く感じる、初めてのものや混ざったものが不安など、理由は子どもによって違います。

理由がわかれば、保護者の方も「また食べてくれなかった」と悩むところから、「今日はここが難しかったのかもしれない」と考えやすくなります。そう見られるようになると、次に何を試すかも決めやすくなります。

えんりっちでは、子どもの発達や感覚、日常生活についてのご相談を、作業療法士をはじめとするスタッフと一緒に考えています。

「この食べ方、少し気になるな」
「感覚の苦手さと関係しているのかな?」

そんな疑問があるときも、お気軽にご相談ください。

お気軽にお問い合わせください。

えんりっちでは、「自分らしく、安心して育つこと」を支えるために、支援の考え方や方針も、できるだけ丁寧にお伝えするようにしています。

療育プログラムについても詳しくサイトでご紹介しています。

また、「うちの子の場合はどうかな?」「ちょっと見学してみたい」と感じた方は、どうぞお気軽にご連絡ください。

参考文献・参考資料

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