なかがわこんにちは!
茨木市で児童発達支援事業や保育所等訪問支援事業を行っている「えんりっち」の中川です。
「服のタグを、毎回切ってほしいと言われるんです」
「散髪の椅子に、どうしても座っていられなくて」
「爪切りを出すと、どこかへ行ってしまいます」
お子さんが特定の感触を強く嫌がる様子を見て、どうしたものかと思われたことはありませんか?
少しずつでも慣れてくれたらと思って何度か試してみたのに、かえって前より嫌がるようになってしまった。そんな経験のあるご家庭も、珍しくないと思います。
今回は、慣れさせようとするとかえって難しくなる「触覚過敏」のこと、そしてお家で今日からできる関わり方についてお話しします。
触覚がしている、二つの仕事

触覚というと、「触った感じがわかる」という一つの働きを思い浮かべる方が多いと思います。
なかがわただ、作業療法士の視点で見ると、触覚には性質のまったく違う二つの仕事があります。
一つめは、何に触れているかを見分ける仕事です。
ポケットに手を入れて、鍵と小銭を目で見ずに選び分けられますよね。あれができるのは、この働きのおかげです。
二つめは、自分の身を守る仕事です。
背中を急にポンと叩かれると、振り向くより先に体がビクッとします。危ないかもしれないものに、考えるより早く反応する仕組みが、私たちの皮膚にはそなわっています。
本人にとっては、服のタグも、散髪のときに首筋に落ちてくる髪の毛も、「危ないかもしれないもの」として届いています。
わがままを言っているのでも、我慢が足りないのでもなく、体のほうが先に反応してしまっている。そう考えていただくほうが、実際に近いと思います。
触覚だけでなく、音や光、においなどにも見られる子どもの感覚過敏・感覚鈍麻については、こちらの記事で詳しく解説しています。

「慣れさせる」を先にすると起きること
ここで、ひとつ困ったことが起こります。
身構えている時間が長くなるほど不安が高まり、不安が高まると脳の警戒レベルも上がっていきます。そして警戒レベルの上がった状態では、同じ刺激がさらに強く感じられるのです。
つまり、慣れさせようとした結果、前よりも過敏になっていく。このループが回りはじめると、抜け出すまでに時間がかかります。
冒頭でお話しした「かえって前より嫌がるようになってしまった」は、おそらくこれが起きているんですね。
では、どこから手をつければいいのでしょうか。
ループのどこかを止められればいいわけですが、いちばん手をつけやすいのが「不安」です。
なかがわ感覚の過敏さに向き合うとき、私たちがまず考えるのは、慣らすことよりも、安心できる状況をつくることです。
「慣れさせる」より先に安心できる環境をつくるという考え方は、触覚だけでなく聴覚でも同じです。聴覚過敏のあるお子さんへの関わり方については、こちらの記事でも詳しくご紹介しています。

同じ刺激でも、感じ方は変わる

安心をつくると言われても、何から手をつければいいのか迷ってしまいますよね。
具体的に手がかりになるような考え方があるので、ご紹介しますね。
同じ強さの刺激でも、脳がどれくらい大きく受け取るかは、そのときの条件によって変わります。変わり方には、だいたい次のような傾向があります。
- 大きさ:小さいほど、小さく感じる
- 新しさ:いつものものは小さく、はじめてのものは大きく感じる
- リズム:一定のリズムは小さく、ばらばらだと大きく感じる
- 予測:次に何が来るかわかっていると小さく、わからないと大きく感じる
※新しさと予測に関しては、すでに恐怖を感じている刺激に対しては、予測が効く方がより怖く感じることもあります。
お経を聞いていると眠たくなるのに、お化け屋敷では大興奮する。あの違いに近いと思っていただくと、わかりやすいかもしれません。
どちらも耳や肌に届く刺激の強さ自体は大きく変わらないのに、次に何が来るか読めるかどうかで、受け取り方がここまで変わるのです。
この四つのうち、ご家庭でいちばん取り入れやすいのが、最後の「予測」です。
どちらもやっていることは、次に何が起きるのかを先に伝えておくだけなんですが、それだけで、お子さんが受け取る刺激の大きさは変わってきます。
療育の場でも、この「予測」から「安心」につなげることをとても大切にしています。
なかがわえんりっちでは、触覚過敏のあるお子さんには正面から関わるようにしています。
療育では、平均台を渡るときに手をつないだり、ブランコに乗っているときの姿勢を整えるために背中や腰を支えたり、お子さんの体に触れる場面が必ずあります。
そんなときに後ろから急に触れると、お子さんはびっくりしてしまって、その次からは触らせてくれなくなることも…。
そうすると、初めは少し体がこわばっていたお子さんも、だんだんと慣れて、自然に受け入れられるようになってくるのです。
家庭で試せる、三つの関わり方

安心できる状況をつくるために、えんりっちで大切にしていることが三つあります。どれもご家庭で試していただけることばかりです。
いつでもやめられるようにしておく
工作に使うのりに、触ってもいいし、触らなくてもいい。触ってみて気持ち悪かったときには、すぐに手を拭ける、洗いに行ける。そういう逃げ道が用意されていることが、まず大事です。
少しチャレンジできたときに、「もう少しがんばってみようか」と背中を押したくなる気持ちは、私にもよくわかります。ただ、ここで一歩踏み込んでしまうと、次から警戒されてしまうことのほうが多いのです。
やめられる保証があるからこそ、次も試してみようと思えるのです。
感覚に慣れることを目的にしない
のりに触るのが気持ち悪ければ、指で塗らなくても大丈夫です。道具を使えば済みますし、それで作品はちゃんとできあがりますよね。
大事なのは、工作そのものを楽しんでいる状態をつくることです。楽しんでいるあいだは、不安が軽くなっています。そして不安が軽くなった状態でいろいろな感触に出会っていくと、過敏さは少しずつやわらいでいきます。
気づいたら触っていた。これがいちばんいい形です。
触らせることを目標にするよりも、楽しい時間をつくることを目標にしていただくほうが、結果的に近道になります。
えんりっちの療育でも、お絵描きや絵具遊び、のりを使った工作をよくします。
絵具やのりを使うときには、手で直接触れる以外に、道具もあわせて用意しています。
触覚過敏のあるお子さんには、道具を使って活動に取り組んでもらい、その中で「ちょっと手についちゃった」を経験してもらうのです。初めは手についたのりが気になっていた子も、工作が進んで熱中してくると、手についたのりには目もくれず、完成を目指していました。
えんりっちが、何かを「できるようにする訓練」ではなく、子ども自身が夢中になれる遊びを大切にしているのも、この考え方があるからです。療育で「遊び」を大切にしている理由はこちらの記事で詳しくお話ししています。

大きくなってからは、本人の気持ちを支える
小さいうちは、嫌なものを嫌だと素直に出してくれます。
ところが高学年くらいになると、感覚の不快さよりも、周りとの違いのほうが気になりはじめるのです。
このころに必要になるのは、工夫をご紹介することよりも、本人が自分で決められるようにしておくことだと思っています。
感じ方には人それぞれ違いがあること、自分が楽に過ごせることは大事にしていいこと。そこを伝えたうえで、どうするかは本人に選んでもらう。そういう支え方に切り替えていきます。
以前担当していたお子さんに、保育園に通い始めてから一度も靴も靴下も履かなかった子がいます。外来の作業療法にも、夏でも冬でもサンダルで来られていました。どうしても嫌だったそうです。
保育園の先生方も触覚過敏をよく理解してくださっていて、その子だけ上靴を履かなくてもいい、帽子をかぶらなくてもいいと、たくさん配慮してくださっていました。しかも、それが特別扱いとして受け止められないようなクラスづくりまでしてくださっていたようです。
そうして年長になり、卒園式を前に、そのお子さんは自分で決めたそうです。「みんなと同じがいい。上靴を履いて、制服を着て卒園式に出る」と。
触覚過敏そのものが治ったわけじゃないんです。
なかがわそれでも、社会性が育つこと、そして本人が選択できる環境があることが、本人が本人らしく過ごすことにつながっていくんですね。
爪切りや散髪、着替え。場面ごとの工夫

ここまでの考え方を、よくご相談いただく場面に当てはめてみます。 どれも、予測できるようにするか、すぐ離れられる保証を確保するか、になります。
爪切り
お風呂上がりは爪がやわらかくなっていて、切るときの引っかかりが少なくなります。そのうえで、切る本数を先に伝えてあげてください。無理に一度に全部やろうとせず、何日かに分けてやってあげてください。
散髪
お店と担当の方を固定できると、「いつもの」に近づいていきます。可能であれば、どういう順番で進むのかを事前に聞いておいて、お子さんに伝えてあげてください。
なかがわバリカンの音が苦手なようでしたら、はさみだけでお願いできるか相談してみるのもいいと思います。
服
タグは思い切って切ってしまいましょう。新しい服は一度洗ってから着せると、生地がやわらかくなって受け入れやすくなることがあります。縫い目が内側に当たらないものや、しめつけの少ないものを選んであげるのも手ですね。
衣替えの時期も、気になるポイントです。半袖から長袖へ、長袖から半袖へ替わると、袖口が肌に当たる位置が変わります。「いつもの」が急に変わることになるので、切り替えは一気にせず、数日かけて少しずつ移行できると受け入れやすくなります。
触れ方
なかがわこれは意外に思われるかもしれませんが、そっと弱くなでるよりも、少し圧をかけてしっかり触れるほうが、受け入れやすいお子さんが多いです。
触覚とひとことで言っても、皮膚には実はいろいろなセンサーが含まれています。触った感じ、圧、温かさ、冷たさ、痛み。これらをまとめて、一般的に「触覚」と呼んでいます。
手をつなぐときや体を拭くときに、ぜひ試してみてください。
もちろん、どれもお子さんによって合う合わないがあります。気になったものを一つ選んで、そこから始めてみてください。試してみて合わないようでしたら、また別の方法に変えていけば大丈夫です。
気になることがあれば、ご相談ください
服のタグを気にしているお子さんに、「そんなに気にならないでしょう」と言いたくなる日もありますよね。毎日のことですし、時間に追われているときほど、こちらの余裕もなくなってしまいます。
それでも、あのタグはお子さんにとって本当に気になっています。
そして、そこから抜け出す道は我慢の先ではなく、安心の側にあります。安心して過ごせる時間が増えていくと、気になる場面のほうが少しずつ減っていきますよ。
えんりっちでは、感覚の過敏さについてのご相談も多くいただきます。えんりっち安威・えんりっち真砂のどちらでも、作業療法士がお話を伺っています。園や学校での過ごし方が気になる場合には、保育所等訪問支援という形でお手伝いできることもあります。
園や学校での過ごし方が気になる場合には、保育所等訪問支援という形でお手伝いできることもあります。作業療法士が実際に園や学校を訪問してどのような支援を行うのかは、こちらの記事で詳しくご紹介しています。


「うちの子の場合はどうだろう」と思われたら、どうぞお気軽にご連絡ください。見学もいつでも受け付けています。
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えんりっちでは、「自分らしく、安心して育つこと」を支えるために、支援の考え方や方針も、できるだけ丁寧にお伝えするようにしています。
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