藍野大学で「地域で働く作業療法士」を語ってきました

なかがわ

こんにちは!
茨木市で児童発達支援事業や保育所等訪問支援事業を行っている「えんりっち」の中川です。

先日、藍野大学医療保健学部 作業療法学科の授業に、講師としてお招きいただきました。

「作業療法治療学演習」という3年生向けの科目で、「地域での作業療法実践とこれからのキャリア」というテーマでお話ししてきました。

3年生は、これから臨床実習を経て国家試験に向かう、専門教育のちょうど真ん中にいる学生さんたちです。

その学生さんに向けて、養成校の正規の授業として地域作業療法の話をする機会をいただけたことを、とてもありがたく感じています。

今回は少し趣向を変えて、その授業で何をお伝えしてきたのかをご報告させてください。実はこの内容、えんりっちが日々の支援で大切にしている考え方そのものでもあります。

なかがわ

保護者の方にも、これから一緒に働く仲間にも、読んでいただけたらうれしいです。

目次

なぜ「地域で働く作業療法士」の話をしたのか

藍野大学の講座で熱く語る、EnRich代表社員中川

作業療法士という資格に、病院やリハビリテーション施設で働くイメージを持つ方は多いと思います。実際、養成校で学ぶ学生さんの多くも、最初はそうした現場を思い描いています。

でも、作業療法士の仕事は、地域にもどんどん広がっているんです。

児童発達支援、放課後等デイサービス、保育所等訪問支援。
子どもとその家族が暮らす場所のすぐ近くにも、作業療法士が関わる仕事があります。

ただ、地域での作業療法は、子どもの心身機能を高めることそのものを目的にしているわけではありません。

私が考える地域作業療法の中心にあるのは、子どもと、その家族や先生、仲間とのつながりを広げていくことです。

子どもがひとつ「できた」を増やす。その瞬間を、お母さんや園の先生と一緒に見て、共有する。すると「お家でもこうしてみようかな」「教室ではこう関わってみよう」と、その子に合った関わり方が、まわりの大人たちの会話の中から自然に生まれてきます。子どもの周りに、その子を支えるチームが少しずつ広がっていく。

これが、えんりっちが地域でやろうとしていることであり、私が学生さんに「地域作業療法とはこういう仕事です」とお伝えした中身です。

えんりっちが大切にしている「専門家のものの見方」

藍野大学の講座で使ったP-E-Oモデルを解説するスライドの一部

授業では、作業療法士がどんな視点で子どもを観ているのか、その思考の枠組みのひとつもご紹介しました。

「P-E-Oモデル」と呼ばれる考え方です。

少し専門的な話になりますが、せっかくなので踏み込んでお話しさせてください。

人が何かの活動を行うとき、そこには3つの要素が関わっています。

ひと(Person)、作業(Occupation)、環境(Environment)の3つです。
この3つが重なり合ったところで、実際の「作業遂行」、つまり「その活動ができる・できない」が決まる、という見方をします。

たとえば「授業中、座って先生の話を聞く」という、一見あたりまえに見える行動。これをこの枠組みで分解してみます。

ひとの側には、姿勢を保つ力、感覚的な欲求が強すぎないこと、ことばを理解する力、注意をひとつに絞る力、お話を記憶しておく力、衝動的な行動を抑える力…こんなにたくさんの要素が必要になります。

環境の側にも条件があります。体の大きさに合った椅子か、教室は整理整頓されているか、まわりのクラスメートは落ち着いているか、先生のお話は分かりやすいか。

そして作業そのものの側面。疲れていない時間帯か、内容に興味が持てるか、お話の長さは適切か、視覚的な手がかりがあるか。

「座ってお話を聞く」というたったひとつの行動に、これだけの要素が絡んでいるんです。

だから私たちは、ある子がそれをうまくできないとき、すぐに「その子の努力不足」とは考えません。

ひと・作業・環境のどこに、どんなミスマッチが起きているのかを分解して観る。
そして、本人を変えようとするより先に、作業のやり方や環境のほうを調整できないかを考えます。

たとえば、給食の時間に落ち着いて食べられないお子さんがいたとします。
まわりの子の動きが次々と目に入って、自分の食事に集中できない。
そう見立てたなら、机に小さなパーテーションを置いてみます。

すると、ほかの子の動きが視界から外れ、自分の食事のエリアがはっきりして、食べることに集中できるようになるケースもあるのです。

「集中しなさい」と言うのではなく、環境のほうを少し変えることで「できた」が生まれる。これが、作業療法士が枠組みを使って支援を組み立てるということです。

働き方は広がっていく。だからこそ、自分の軸を

授業の後半では、作業療法士としてのキャリアについてもお話ししました。

作業療法士という資格に、「病院で働く人」というイメージを持つ方は、今も少なくないと思います。

でも、私が学生さんにいちばん伝えたかったのは、作業療法士の働き方は、今どんどん広がっているということでした。

病院やリハビリテーション施設だけでなく、児童発達支援や放課後等デイ、保育や教育の現場、学校、行政、地域。作業療法士が力を発揮できる場所は、この数年でぐんと増えました。

そして、今目の前にいる学生さんが現場の中堅になるころには、その広がりはもっと大きくなっているはずです。「OTはこう働くもの」という決まった形ではなく、いろんな働き方の中から自分に合うものを選んでいける。

なかがわ

私はそこに、大きな希望を感じています。

ただ、選べる幅が広いということは、その分、自分でキャリアの軸を決めていく必要があるということでもあります。

自分にとって何が大事で、何はそうでもないのか。どんな場所で、どんなふうに働きたいのか。ここがあいまいなままだと、せっかく働き方が広がっても、どこかで「ただの人手」として使われるだけになってしまうこともあります。

そこで授業では、その軸を考えるきっかけとして、ひとつのワークを話題提供として一緒にやってみました。
MBTIという性格タイプ診断をご存じの方も多いと思いますが、それを参考に、作業療法士版として私が用意した「OTTI」という簡単な自己チェックです。

藍野大学の講座で使ったOTTIを解説するスライドの一部

自分がどんなことに向いていそうか、どんな働き方だと力が出せそうか。答えを決めつけるためではなく、これから自分のキャリアを考えていくための、最初のとっかかりにしてもらえたらという思いでした。

そしてもうひとつ、藍野大学の学生さんには、これからのキャリアがとても楽しみになる強みがあります。

藍野大学の作業療法学科では、作業療法士に加えて保育士の資格取得も目指せるカリキュラムが用意されています。作業療法の視点と、保育の視点。ふたつの専門をあわせ持つ人になれる可能性があるということです。

子どもの育ちに関わる現場では、この組み合わせがこれから本当に力になっていくと思います。だからこそ、今のうちから視野を広げて、自分のキャリアを自由に思い描いてみてほしい。そんな気持ちでお話ししました。

なかがわ

そして、こうした学びを一度きりの授業で終わらせないために、藍野大学さんとは継続的な連携を進めています。

3年生の後期、今年の11月から12月ごろを目処に、えんりっちで学生さんを受け入れるインターンプログラムを始めることで合意しました。授業のあとには、さっそく1名の学生さんが「参加したいです」と手を挙げてくれました。

現場で実際に子どもと関わり、作業療法士がどう間合いを取り、どう動いているのかを近くで見て、体験してもらう。理論やエビデンスが、なぜ現場で効くのかを、現場とつなげて学んでもらう。教える側として養成校に関わり、次の世代を育てていく。

えんりっちには、そういう文化を大切にしたいという想いがあり、少しでも次世代の成長のお手伝いができればと思っています。

講義を受けた学生さんの声

授業のあと、学生のみなさんから感想を寄せていただきました。作業療法学科の3年生が、今回の話をどう受け止めてくれたのか。印象に残った気づきを、いくつかご紹介します。

  • P-E-Oモデルのように「ひと・作業・環境」の枠組みで観ると、対象となる人の困りごとや強みが整理され、より具体的な支援を考えやすくなる、という気づき。実習やボランティアで実際に使ってみたい、という声も多くありました。
  • 地域作業療法が目指すのは、心身機能を高めることそのものよりも、子どもと家族・先生とのつながりを広げていくことだ、という理解。今の生活を支えるだけでなく、その子のこれからの人生にもつながる支援なのだと感じた、という声。
  • 作業療法士の活躍の場は、病院だけでなく地域・教育・行政へと広がっていて、資格の名前そのままで雇われるとは限らない。だからこそ、自分がどんな立ち位置で働きたいのかを選ぶ視点が要る、という気づき。
  • 何を大切にして働きたいのか、専門性か・安定か・収入か。自分のキャリアを、はじめて自分ごととして考えるきっかけになった、という声。

学生さんが、それぞれの視点で真剣に受け止め、自分の将来と結びつけて考えてくれたことが、こちらとしても大きな励みになりました。

これからの仲間へ

ここまで読んでくださった方の中に、もしかしたら作業療法士や、子どもの育ちに関わる専門職を目指している方、あるいはすでに現場で働いている方がいらっしゃるかもしれません。

えんりっちは、専門性を大切にして、それを学び合い、次の世代へ手渡していくことを大事にしている事業所です。

毎週スタッフが集まり研修をし、現場のケースから学んだことを社内で共有していく。そういう環境の中で、子どもと家族のために、地域でできることを一緒に広げていける仲間を探しています。

地域で、作業療法士として生きる。その面白さに少しでも心が動いた方は、見学も受け付けていますので、ぜひ一度、えんりっちをのぞきに来てください。

子どもの「できた」が増えて、その子の周りに、あたたかいつながりが広がっていく。私たちが大切にしているのは、そんな毎日です。これからも、専門性と誠実さを土台に、地域での子育ての縁を豊かにしていきたいと思っています。

お気軽にお問い合わせください。

えんりっちでは、「自分らしく、安心して育つこと」を支えるために、支援の考え方や方針も、できるだけ丁寧にお伝えするようにしています。

療育プログラムについても詳しくサイトでご紹介しています。

また、「うちの子の場合はどうかな?」「ちょっと見学してみたい」と感じた方は、どうぞお気軽にご連絡ください。

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