なかがわこんにちは!
茨木市で児童発達支援事業や保育所等訪問支援事業を行っている「えんりっち」の中川です。
2026年7月31日、茨木市立福井小学校の校内研修にお招きいただき、教職員の皆さまに「認知機能とUD(ユニバーサルデザイン)〜同じ教室でも、受け取り方はちがう〜」をテーマにお話ししました。
今回、一番お伝えしたかったのは、「同じ教室で同じ指示を受けていても、子どもによって受け取り方は違う」ということです。
先生の話を聞く。
黒板を見る。
必要な道具を出す。
指示を覚えて、次の活動へ移る。
学校では毎日のように行うことですが、実はここにも「注意を向ける」「言葉を理解する」「情報を一時的に覚えておく」といった、さまざまな認知機能が関わっています。
そこで今回は、「注意と教室環境」「伝え方と情報の処理」の2つを軸に、体験型のワークも交えながら、子どもが学びやすい環境や伝え方について先生方と一緒に考えました。
福井小学校ですでに行われていた、たくさんの工夫

研修の前に学校を見学させていただくと、福井小学校では、学びのユニバーサルデザインの視点からさまざまな工夫がすでに行われていました。
どれも、先生方が日々の学校生活の中で取り組まれている工夫です。
今回の研修では、こうした実践を見ながら、「なぜ、この環境だと子どもが分かりやすいのか?」「認知機能とどのようにつながっているのか?」を作業療法士の視点から整理していきました。
なかがわすでに取り組んでいることに理由や根拠が加わると、「なぜこの工夫をするのか」を先生方同士でも共有しやすくなります。
学校全体で続けたり、その時々の子どもたちに合わせて応用したりするための材料にもなります。
「注意」は環境によっても変わります
研修の前半では、「注意」について取り上げました。
注意と聞くと、「集中できる・できない」というイメージが浮かぶかもしれません。
しかも、注意の向きやすさには個人差があります。同じ子どもでも、疲れや気分、周囲の環境によって変わります。
研修では映像を使ったワークにも挑戦していただきました。あることに集中して見ていると、目の前で起きている大きな変化に、大人でも気づかないことがあります。
「見えているから気づいているはず」
「一度説明したから分かっているはず」
そう考えたくなる場面もありますよね。
なかがわでも、注意がどこに向いているかによって、入ってくる情報は変わります。
だからこそ、「この子は集中できているかな?」と子どもだけを見るのと同じくらい、「必要なものに注意を向けやすい環境になっているかな?」と周囲を見ることも大切なんです。
この「見えていても、注意が向いていなければ気づかない」現象は、心理学では非注意性盲目として研究されています。
参考:Gorillas in our midst: sustained inattentional blindness for dynamic events(Simons & Chabris, 1999)
教室環境を整えると必要なものに注意を向けやすくなる

教室の中に目に入る情報が多ければ、それだけ注意が向く候補も増えます。
たとえば机の上にたくさんの物があると、その中から「今使うもの」を選ぶだけでも負荷がかかります。
そこで、
- 黒板のまわりに不要な掲示がないか
- 片づける場所が決まっているか
- 机の上に、その授業で必要な物だけがに出ているか
- どの席からも黒板が見やすいか
といった環境を見直すことで、今注目してほしいものに注意を向けやすくなります。
研修でも、教室の視覚環境と注意・学習の関係を調べた研究をご紹介しました※。幼児を対象とした実験では、装飾の多い教室では注意がそれる時間が増え、学習の伸びも小さかったことが報告されています。
もちろん、教室の環境は学年や授業内容、クラスの人数、先生の授業の進め方によって変わります。
なかがわ「掲示は何枚まで」「机の上は必ずこの状態」とルールを決めるより、その場面で子どもが何を見て、何をすればいいのか分かりやすいかを考えることがポイントです。
研修では、先生方同士で「普段、机の上をどう整理しているか」「物が多くなる授業ではどんな工夫をしているか」などを話し合う時間も設けました。
同じ言葉でも頭に浮かぶものは違います

後半では、言葉の伝え方と情報の処理について考えました。
なかがわここでは、「えんぴつ」「大きい」「前」「勇気」という言葉を、順番に絵にしていただくワークを行いました。
「えんぴつ」は比較的似た絵になります。
表現することが目的なら、その違いは面白さになります。
一方、筆算の書き方、整列の仕方、配膳や掃除の手順など、「みんなで同じことをする」場面では、受け取り方の違いが「分かりにくさ」につながることがあります。
そんなときは、
- 短く、具体的な言葉で伝える
- 一度に一つの指示を伝える
- 「これ」「それ」を減らし、対象を具体的に示す
- 見本、写真、電子黒板など、目で確認できる情報を残す
といった工夫が役立ちます。
子どもによって、目で見た方が分かりやすい、耳で聞いた方が分かりやすいなど、情報の受け取り方にも違いがあります。詳しくは、こちらの記事でご紹介しています。

伝えた内容を「見ればもう一度確認できる」状態に

もう一つ取り上げたのが、ワーキングメモリです。
授業中の子どもたちは、先生の話を聞きながら、板書を写し、次の指示を覚え、手元の作業を進めています。
一つひとつならできることでも、いくつも重なると、頭の中に置いておく情報がどんどん増えていきます。
そこで役立つのが、板書や電子黒板、写真、手順表などです。
「覚えておいてね」と頭の中に残してもらうだけでなく、必要になったときに見直せるようにしておく。これだけでも、取り組みやすくなる子どもがいます。
ワーキングメモリについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。ご家庭や学校でできる具体的な工夫も紹介しています。

今回の研修でお伝えしたかったことをまとめると、
「環境で注意を助ける」
「伝え方で理解と記憶を助ける」
ということです。
子どもの頭の中だけで頑張ってもらうのではなく、環境と伝え方を整える。
そうすると、同じ教室の中でも、参加しやすくなる子どもが増えていきます。
先生方が目の前の子どもに合わせて工夫を広げていけるように
なかがわ作業療法士が学校に関わるとき、僕が大切にしていることがあります。
「このタイプの子には、これをしてください」と方法だけをお伝えするより、
- なぜ、その子にとって難しいのか。
- どこを変えると取り組みやすくなるのか。
- 今ある工夫を、別の場面にどう応用できるのか。
こうした背景を先生方と一緒に考えることです。
福井小学校では、すでに学校全体で学びやすい環境づくりに取り組まれていました。
今回の研修が、その取り組みを別の角度から見直し、これからの授業や学級づくりを考える一つの材料になればうれしく思います。
作業療法士は子どもと「環境」の関係も見ています
作業療法士というと、姿勢や運動、手先の不器用さなど、身体面の支援を思い浮かべる方が多いかもしれません。
学校生活を考えるとき、僕たちは「その子に何ができるか」と同時に、「どんな環境で、どんな活動をしているのか」も見ています。
教室環境や活動の進め方、先生の伝え方が変わることで、その子が持っている力を発揮しやすくなることもあります。
学校での作業療法士の役割や、訪問支援でどのように先生方と連携していくかについては、こちらの記事で詳しくご紹介しています。

学校・教育機関向けの研修も行っています
えんりっちでは、子どもへの直接支援に加えて、学校・教育機関、保育・福祉関係者、保護者の方向けの研修・講演も行っています。
今回のような、
- 子どもの認知機能と教室環境について考えたい
- 学びのユニバーサルデザインを、日々の授業づくりにつなげたい
- 注意やワーキングメモリを踏まえた伝え方を学びたい
- 学校ですでに行っている取り組みを、専門職の視点から整理したい
といった内容も、ご希望を伺いながら一緒に研修内容を考えていきます。
なかがわ「こういうテーマでもお願いできる?」という段階からでも大丈夫です。お気軽にお問い合わせください。
