聴覚過敏はわがままじゃない。苦手な音への対策と、親子で笑顔になれる「安心な環境」の作り方

なかがわ

こんにちは!
茨木市で児童発達支援事業や保育所等訪問支援事業を行っている「えんりっち」の中川です。

「今の音、大丈夫かな……?」

家の中で掃除機をかける時、あるいは外出先で救急車のサイレンが聞こえてきた時。
お子さんの様子を見て、少し心配になることはありませんか?

大きい音に反応して、周りから「どうして?」という視線を感じることも。
「うちの子だけ?」「私の関わり方のせいかな」と考えてしまうこともあるかもしれません。

でも、少し立ち止まって、私の話を聞いてみてください。

実は、その「耳を塞ぐ」という行動。
お子さんにとっては、「自分を守るための大切な方法」かもしれません。

今回は、しつけや我慢では解決しにくい「聴覚過敏」のこと、そしてお家で今日からできる「安心できる環境づくり」についてお話しします。

目次

「苦手な音」のパターンと過敏さの背景にある3つの原因

一口に聴覚過敏といっても、どんな音が苦手か、どんな場面で困るのかは人それぞれです。

よくご相談を受けるのは、

  • 子どもの甲高い泣き声が苦手
  • 掃除機やドライヤーなどの大きな音が苦手
  • 大人数のざわざわした音が苦手

といった困りです。

中には、「合唱で音程がずれているのが気持ち悪い」というエピソードも時折伺います。

過敏という状態の背景には、

  • 生理的に不快感・恐怖感を感じる音があるタイプ(情緒的反応)
  • 本来なら脳が抑制するはずの音を拾ってしまい集中できないタイプ(図地判別)
  • 周囲の状況からいつ音が鳴るのか予想ができず常にびっくりしているタイプ(予測性)

などがあり、これらが組み合わさっていることもあります。

なかがわ

例えば、トイレにあるジェットタオルの音が苦手という訴えもよく相談にあがります。

この場合、③が背景であることが多いように思います。③が背景だとすると、自分がトイレをしているときに見えないところで誰かが(本人にとって急に)ジェットタオルを使用して、びっくりしてしまう。

そしてその音がなぜなるのかがわからないと、余計に不安感が強まり、トイレにいけなくなるということがあります。

よく行う対応としては、ジェットタオルの仕組みを理解してもらうという方法です。

自分で使ってみることで、「手を入れたらこの音が鳴るんだ」と理解するお子さんもいれば、センサーの仕組みが理解できて安心する方もいます。

また、保護者と一緒にトイレに行っている場合には、音が鳴りそうなときに「音が鳴るよ」と予告することで安心感が持てることもあります。

「音のボリューム調整」がうまく働いていない状態

私たち大人は、騒がしいカフェにいても、目の前の人の声だけを聞き取ることができますよね。

これは脳が「大事な音」と「背景の音」を自然に分けて処理(図地判別)してくれているからです。

しかし、聴覚過敏のあるお子さんの脳では、この「仕分け機能」がうまく働きにくいことがあります。

すべての音が「同じ強さ」で入ってくる

エアコンの音、遠くの工事の音、誰かの話し声。これらすべてが、同じくらいの強さで一度に耳に入ってきます。

「うるさい」を超えて「辛い」

お子さんにとって特定の音は、単に大きいだけでなく、「風船が割れたときのような衝撃」や「頭の中で響くような不快感」として感じられることがあります。

そんな状態で「我慢しなさい」と言われるのは、私たち大人が「工事現場の音の中で、普通に過ごしてください」と言われるのと同じくらい、つらいことなのです。

「慣れさせれば大丈夫」の落とし穴

よく「今のうちに嫌な音に慣れておかないと、将来困るかも」というアドバイスを耳にしますが、実は感覚過敏に関しては、うまくいかないことが多いのです。

無理に音を聞かせ続けると、お子さんの脳は「ここは安心できない場所」「いつ嫌なことが起きるかわからない」と感じてしまい、かえって過敏さが強くなったり、その場所自体に行くことを嫌がるようになります。
(保育園で合唱が始まると途端にクラスを飛び出す子などは上記のような背景が考えられます)

なかがわ

大切なのは、まずお子さんに「守られている」という安心感を与えることです。

そのための有効な手段が、イヤーマフやノイズキャンセリングイヤホンといった「サポート道具」です。

  • イヤーマフは「心のサポート道具」
    見えにくい子がメガネをかけるように、音が辛い子がイヤーマフやノイズキャンセリングイヤホンを使うのは、ごく自然な「補助具」です。
  • 安心の積み重ね
    「今はイヤーマフがあるから平気」という安心感があってこそ、脳は少しずつリラックスして、外の世界を受け入れやすくなっていきます。

近年、聴覚に対する感覚の違いが広く認知され、サポートグッズも進化しています。

音楽ライブでインパクトを和らげる耳栓や、会話を聞き取りやすくする耳栓など、個人の困り感に合わせた多様な選択肢が生まれており、「聞こえ方」は人それぞれという理解が深まっています。

感覚対策グッズを選ぶポイント

このように親御さんが子どもの状況を理解され、「お子さんが楽になるなら…」と対策グッズを購入されるとき、よく起こるのが、「やだ、かっこわるい」と本人が使用を拒否することです。

グッズを使用するのはお子さんです。グッズにもいろいろあります。

一番いいのはお子さんと一緒に試しながら、使いたいものを選ぶことです。

体験してみることで「絶対これがいい」と即決する子もいますし、お気に入りのカラーや好きなキャラクターのシールを張ることで愛着を育てていく子もいます。

大事なのは機能や性能だけではなく、「お子さんが選ぶ」ということです。

なかがわ

ぜひお子さんの「お気に入り」を、一緒に探してあげてください。

今日からできる、お家での「環境デザイン」

大切なのは「我慢」ではなく「工夫」です。少しの工夫で、お子さんの困り感は減らせます。

1. 「心の準備」をプレゼントする

「今から3分だけ、掃除機をかけるね。終わったら教えてあげる」と、終わりとセットで予告してあげてください。見通しが立つだけで、不安はグッと下がります。

2. 逃げ込める「安心スペース」を作る

家の中に「ここは静かで落ち着ける」という小さなスペース(段ボールハウスやテントなど)を用意してあげましょう。

3. 音の出る家電にひと工夫

おもちゃのスピーカーにセロハンテープを貼って音を小さくしたり、静音モードのある家電を選んだり。環境をお子さんに合わせてあげる発想です。

まとめ|一人で抱え込まないでくださいね

お子さんが耳を塞ぐのは、わがままでも弱さでもなく、一生懸命に自分の世界を調整しようとしている証拠です。

そして、そんな我が子を支えようと日々向き合っているご両親。本当によくやっています。

えんりっちでは、療育スタッフが「どこの感覚が、どう辛いのか」を専門的に見立てて、ご家族が少しでも楽になれる方法を一緒に考えます。

お気軽にお問い合わせください。

えんりっちでは、「自分らしく、安心して育つこと」を支えるために、支援の考え方や方針も、できるだけ丁寧にお伝えするようにしています。

もっと具体的に知りたい方へ向けて、支援プログラム全体の構成や考え方をまとめた資料もご覧いただけます。

また、「うちの子の場合はどうかな?」「ちょっと見学してみたい」と感じた方は、どうぞお気軽にご連絡ください。

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