座っていられない子どもは「やる気」の問題? 姿勢が崩れる本当の理由と、今日からできる工夫

なかがわ

こんにちは!
茨木市で児童発達支援事業や保育所等訪問支援事業を行っている「えんりっち」の中川です。

「もう少し背中まっすぐにしようか」
食事中や宿題の時間に、つい同じ声かけを繰り返してしまうことはありませんか?

小学校の面談で先生から「授業中、少し落ち着きがなくて……」と言われると、「もっと厳しくした方がいいのかな」と不安になりますよね。

でも、お子さんが「座っていられない」のには、本人の意志や頑張りとは別のところに理由があることも多いんです。

今回は、「姿勢の崩れ」や「立ち歩き」の背景にある体の感覚のしくみと、お家でできる具体的な工夫についてお話しします。

目次

なぜ子どもは「じっと座っていられない」のか?姿勢の裏にある2つの感覚

「座る」という動作は、見た目のシンプルさとは裏腹に、体のいろいろな機能が連携して成り立っています。お子さんの体が安定しにくい背景には、主に2つの感覚が関わっています。

 自分の体の位置を感じる「固有受容覚(こゆうじゅようかく)」

目をつぶっていても、自分の腕がどこにあるかなんとなく分かりますよね。これは筋肉や関節にあるセンサーが脳に情報を送っているからです。

このセンサーの働きが弱いと、脳が「自分の体が今どういう状態か」をつかみにくくなります。すると、体を揺らしたり椅子をガタガタさせたりすることで、「ここに体があるよ」という情報を脳に送ろうとするわけです。

これは「落ち着きがない」のではなく、むしろ脳が情報を求めているサインです。

えんりっちでの相談でも、「授業中ずっと椅子を揺らしている」「消しゴムをちぎり続ける」といった行動がこの固有受容覚と関係しているケースは少なくありません。

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周りから見ると「ふざけている」ように見えても、本人にとっては体の状態を把握するための手がかりになっていることがあります。

まっすぐを保つための「前庭覚(ぜんていかく)」

スピードや傾きを感じる感覚で、体のバランスを保つ土台になっています。ここの働きが未熟だと、重力に対して体をまっすぐ保つこと自体に労力がかかります。

たとえるなら、ゆるく揺れる電車の中でずっと立ち続けているような感覚です。大人でも長時間は疲れますよね。

そう考えると、すぐに机に突っ伏したり姿勢が崩れたりするのも無理のないことだとわかります。

この2つの感覚は、どちらか一方だけが原因ということは少なく、組み合わさって影響していることが多いです。

また、その日の体調や疲れ具合、教室の環境(騒がしさや温度など)によっても変わるため、「昨日は座れていたのに今日はダメ」ということも珍しくありません。

「我慢で座らせる」がうまくいかない理由

姿勢が安定しないお子さんに対して、無理に椅子に座らせ続けるのはうまくいかないことが多いです。

体の土台が整っていない状態で我慢を強いると、「座ること=つらいこと」になってしまい、学習そのものへの意欲が下がりやすくなります。

これは聴覚過敏のお子さんに「慣れさせよう」として無理に音を聞かせるのと似ていて、苦手なことへの無理な反復は、かえって拒否感を強めてしまうことがあります。

「座れる体」は遊びの中で育つ。療育現場での取り組み

なかがわ

えんりっちでは、机に向かう前に、まず「体を使った遊び」を取り入れることをおすすめしています。

ただし、ここでいう「遊び」は単に体を動かすことが目的ではありません。遊びを通して、体を支える力や体の使い方を自然に学んでいくことがポイントです。

えんりっちで実践している遊びの例

  • ぶら下がりや手押し車:腕や肩にしっかり力が入ることで、固有受容覚への刺激になります。「自分の体がどこにあるか」の感覚が入りやすくなり、体を支える力の土台が育っていきます。
  • トランポリンやブランコ:遊びながら前庭覚を刺激し、バランスを保つ力を育てます。

えんりっちの感覚統合のページでもお伝えしていますが、「机に向かう前に、『座れる体』を育てること」が大切だと考えています。遠回りに見えますが、全身をしっかり動かして感覚の土台が整ってくると、声をかけなくても自分から座れる時間が少しずつ増えていきます。

ただ、どの遊びが合うかはお子さんによって異なります。ぶら下がりが好きな子もいれば、揺れる遊びのほうがしっくりくる子もいます。お子さんの反応を見ながら、楽しめるものを選んでみてください。

【事例】姿勢が保てなかったC君の変化

ここでえんりっちの療育での事例をご紹介します。

椅子に座るとどうしても背中が丸まり、体が机にもたれてしまっていたC君。体を大きく動かす遊びをしても、走る・ジャンプなどでなかなかパワーが出ませんでした。全身をしっかり伸ばす力が弱かったのです。

うつ伏せになってブランコに乗ることから始め、まずは頭を起こしたり、両手を伸ばしても姿勢を保ったり、前庭刺激を感じながら姿勢を保つ(伸ばす)活動をたくさんしました。

それ以外にもトランポリンで高く・遠く跳べるように活動したりしました。療育を続けていく中で徐々に机にもたれることが減り、椅子に座った姿勢もシャキッと伸びるようになっていきました。

なかがわ

座る練習ではなく、遊びの中で体の使い方を学んでいったことが土台になったケースです。

ポイントとしては、姿勢を保つ力のどこが未熟かを評価することです。
伸ばす筋肉が未熟か、曲げる筋肉が未熟か、はたまた伸ばす筋肉と曲げる筋肉を協力して動かすことが苦手か、背景によってアプローチが変わります。

姿勢が崩れやすい子どもに今日からできる3つの工夫

お家ですぐに試せる工夫を3つご紹介します。どれもちょっとしたことですが、お子さんの体の仕組みを踏まえた方法です。

「足の裏」を地面につける

足がぶらぶらしていると、体は安定しにくくなります。小学校低学年だと、椅子に座ったときに足が床に届かないことも多いです。踏み台や箱を椅子の下に置いて、足裏がしっかり床につくようにしてあげてください。これだけで体幹が安定しやすくなります。

あえて「動く時間」を挟む

15分ほど勉強したら、少し体を動かす時間を入れる。ジャンプでもいいですし、「お茶を持ってきて」とお手伝いを頼むのもいい方法です。合間に体を動かすことで、固有受容覚や前庭覚への刺激が入り、その後の集中が続きやすくなります。

バランスクッションを試してみる

椅子の上に少し揺れるクッションを置くと、座りながら微細な揺れの刺激が入ります。これが合うお子さんは、かえって集中が続きやすくなることがあります。

ただ、揺れが気になって落ち着かない子もいるので、使ってみてお子さんの様子を見ながら判断してください。
合わなければ無理に続ける必要はありません。

なかがわ

なんかそわそわしていて「刺激が欲しそう」と思っても、何の刺激かによってグッズも変わります。

  • 前庭刺激が欲しい人は揺れや動きの刺激がいいのでバランスクッション
  • 固有需要覚刺激が欲しい人は筋肉への刺激がいいので、ゴムチューブやスクイーズ
  • 触覚刺激が欲しい人は皮膚への刺激がいいので、人工芝(足)や凸凹マット(お尻)

色々と試してみてお子さんが「これいい!」とヒットするものが一番ですね。

まとめ|注意より「体の土台」と「環境」を整える

お子さんが椅子でモジモジしたり姿勢が崩れたりするのは、「やる気がない」からとは限りません。むしろ、座り続けるために体が工夫しているサインであることが多いです。

大切なのは、繰り返し注意することよりも、体の土台を遊びの中で育てていくこと。そして、椅子や足元の環境をお子さんに合わせて調整してあげることです。

えんりっちでは、作業療法士が一人ひとりの感覚の特徴を見立てて、その子に合ったアプローチを提案しています。安威教室真砂教室ともに、全身を使った遊びを通して「座れる体づくり」に取り組める環境を整えています。

なかがわ

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えんりっちでは、「自分らしく、安心して育つこと」を支えるために、支援の考え方や方針も、できるだけ丁寧にお伝えするようにしています。

療育プログラムについても詳しくサイトでご紹介しています

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